離婚を考えるとき、避けて通れないのが「お金をどう分けるか」という問題です。特に熟年離婚では、長年の生活の中で築いた預貯金や年金をどう扱うかが重要になります。「半分ずつ分けるのが当然」と思い込んでいる人も多いかもしれませんが、実際にはそう単純ではありません。今回は、熟年離婚を考える前に知っておきたい財産分与と年金分割の基本を、わかりやすく解説します。
まず、預貯金について。「結婚中に増えたお金は夫婦で築いた財産」として財産分与の対象になりますが、「結婚前の貯金」や「相続・贈与で得た財産」は原則的に個人の資産として扱われます。そのため、すべてを半分ずつに分けることはできません。
また、熟年離婚の場合、昔の通帳を捨ててしまっている人も多く、どこまでが結婚前の貯金かを証明できないケースもあります。そうした場合は、銀行に取引履歴を請求して確認することが可能です。通常は過去10年分までですが、特別な事情があればそれ以前の履歴も取り寄せられる場合があります。
さらに、相手が財産を隠している可能性があると感じたら、弁護士に相談を。必要に応じて弁護士会照会制度を利用し、金融機関に情報開示を求めることもできます。離婚後に後悔しないためには、証拠を残し、法的に確認する手続きを早めに取ることが大切です。
次に、見落とされがちな「年金分割」について。離婚をすると、婚姻期間中に納めた厚生年金の記録を夫婦で分けることができますが、分割の対象になるのはあくまで厚生年金のみ。国民年金(基礎年金)は個人単位で支払うものであり、分割の対象にはなりません。
つまり、たとえ夫が高収入でも個人事業主で厚生年金に加入していない場合、年金分割は行われません。逆に、妻が会社員で厚生年金に加入している場合、妻から夫へ分割されるケースもあるのです。
また、厚生年金には「標準報酬月額65万円」という上限があります。月給が100万円でも、年金保険料は65万円の人と同じ計算になります。したがって、「夫の給料が高いから年金も半分もらえば安心」という考えは誤りです。
年金分割を行うには、離婚前に「年金分割のための情報通知書」を請求する必要があります。50歳以上であれば通知書に受け取り見込み額が記載され、50歳未満の場合は基礎となる標準報酬月額のみが示されます。分かりにくい場合は、年金事務所やファイナンシャルプランナーに相談して、具体的な受給額の目安を確認しておきましょう。
「年金だけで老後は安心」と言われた時代は終わりました。いまや年金は「老後資金の一部」に過ぎません。しかし、年金は一生涯受け取れる“終身型の資産”でもあります。支払った保険料は将来の生活を支える大切な土台となるため、「払うのがもったいない」と思わず、長期的な視点で考えることが大切です。
離婚後の生活を安定させるには、感情的な判断ではなく、事実と数字に基づいた冷静な準備が必要です。預貯金も年金も、ただ「半分もらえる」と思い込むのではなく、制度の仕組みを正しく理解し、自分の権利を守る知識を持つことが、熟年離婚後の安心につながります。
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